カリウムの薬
まず始めにカリウムとリンの薬は同じような作用をすると思われがちですが
これは間違いです。リンの薬は食べたものと混ざることで効果を発揮しますが
カリウムの薬は食事だけでなく、体内でカリウムの多い場所で結合して体外へ
排出します。
体内でカリウムが多い場所はどこでしょう?
答えは大腸(結腸)です。
腎臓の機能が低下し、尿からのカリウム排泄量が少なくなると人体はカリウム
を排出するために通常の数倍~数十倍のカリウムを大腸(結腸)から排出する
ことが出来ます(人体は素晴らしい)。
食べたものが大腸(結腸)まで届くには個人差がありますが1日以上は
かかります。カリウムの薬は食前、食後の指示で出ることが多いですが
気になるときは早く飲むに限ります。皆さんもカリウムとリンの薬の
違いが説明できるようになりましょう。
1、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ケイキサレート®など)
ケイキサレート®は5g散剤と3.27gドライシロップがあり。ドライ
シロップは散剤の約76%の効果あり。この薬はナトリウムとカリウムを
体内で交換するため高ナトリウム血症や体重増加が多い患者さんには
お勧めしません。1g当たり約1mEq(ミリイクイバレントと読みますが
病院内ではメックと呼ぶことが多いです)のカリウムと交換することが
出来ます(この解説は下記参照)。
2、ポリスチレンスルホン酸カルシウム(カリメート®、アーガメイト®
など)
この薬はカルシウムとカリウムを交換すためナトリウム制限のある
患者さんにも利用できます。散剤、ドライシロップ、経口液、ゼリー、
顆粒など色々なタイプがありますが、散剤1g当たり約1mEqの
カリウムと交換することは変わりません。
カリウムの薬を飲めば大丈夫?
カリウムの薬を飲めば少し多く食べても大丈夫と考えている患者さんや
栄養士は多いと思われます。
「この薬を飲むとどのくらい食べられるの?」と患者さんや他のスタッフに
聞かれた場合どうしますか?
ここではこの質問の答えを考えましょう。
1g当たり約1mEqのカリウムを交換することが出来ると書きましたが、
1mEqはカリウム何mgに相当するのでしょうか?
カリウムの分子量は約39です。
(分子量が分からない場合は、ネットまたは化学の教科書で調べましょう)
カリウムが6.02×10の23乗個あると1モル(mol)=約39gになります。
カリウムは1価の陽イオン(プラスイオン)になるため
約39g=1mol=1Eqになります。これを1000分の1にすると
約39mg=1mmol=1mEq になります。
ようするに1mEqのカリウムは約39mgになります。
39では計算しにくいため40で計算すると
カリウムの薬5gはカリウム5mEq(約200mg)と交換できます。
ここは化学を勉強していない人には難しい部分ですが、臨床現場では
とても重要です。文系の栄養士で病院の臨床現場で働きたい人は必ず
化学を勉強しましょう。
話がずれましたが、カリウムの薬を1袋(5g)を飲んで安心して
バナナを1本食べるとどうなるでしょう?
バナナ1本 可食部100gとして カリウム360mg
カリウムの薬で交換できるカリウムは最大で約200mg
安心して食べた結果、差し引き約160mgのカリウムが体内に吸収される
ことになります。
さらに便秘をしている患者さんはカリウムが体外へ出ません。
カリウムの薬を飲んでも安心してはいけないことを我々は説明しましょう。